せんいのまち一宮には、まだまだ知られざる一面があります。2024年2月11日に本町商店街・オリナス一宮で行われた尾州のファッションショー。そして、外国人にも人気のロリィタファッションを体験できるサロン。どちらも、組合でも企業でもなく、あるひとりの女性が立ち上げたものなんです。ロリィタファッションを愛する彼女が、尾州で表現したい世界は何なのか。体験レポートでお伝えします。
目次
ロリィタの歴史~ロリィタって何?
ロリィタファッションとは、お人形のようなお姫様ファッションと、ロココやヴィクトリア様式などの中世ヨーロッパ風ファッションを掛け合わせ、70年代に生まれた原宿発“カワイイ”系ファッションのことです。80年代にはMILK (ミルク) 、PINK HOUSE (ピンクハウス)などのブランドが誕生してブームとなり、90年代になると、パンクやクラシックな要素を取り入れた“ダークなのにカワイイ”という尖ったファッションも流行して、独自の世界観を創り上げていきました。この頃には、エプロンやシューズ、ヘッドドレス、ペチコートなどのアイテムやメイクも定着し、これがロリィタファッションのベースとなっていきます。
世間の人たちがロリィタを知るきっかけとなったのが、映画『下妻物語』(2004年/東宝)でしょう。深田恭子さん演じる主人公が着ていた世界そのものが、私たちの持つロリィタのイメージとなりました。
ロリィタ専用サロン~偏見を気にせずロリィタを楽しみたい
フリフリにヒラヒラを見慣れていない層からすれば、非現実的なロリィタの世界。今ほど多様性が進んでいないあの頃には、ロリィタ特有の甘々な世界観は、多くの人にとってとうてい理解しにくいものでもありました。
ロリィタ体験サロン「LOCOCO」オーナーのショコラさんも、10代の頃は、周囲の目を気にしながらロリ活をしていたといいます。「幼い頃、兄のおさがりばかり着ていた反動からか、可愛い服に憧れて、ロリィタの世界にすっかり夢中になりました。でもロリィタ服は目立つので、近所の噂になって両親に迷惑をかけないように(笑)、駅で着替えてから家に帰っていましたよ。地方でロリィタはハードルが高いんです」。
だからこそ、親の反対や周囲の目で“好き”を貫けないロリィタ女子の気持ちが痛いほどわかるといいます。「ロリィタ服は高額なので、何着も買えない。気の済むまでカワイイお洋服を着てみたい」「人目を気にせず、好きな世界に没頭してみたい」「ロリィタになれるメイクやポーズを知りたい」…ショコラさんはそんな想いを持っている多くの人たちの居場所を作るために、サロン開業を決心します。
最初は市内にある小さなアパートの一室を借りてオープンにこぎつけました。ニッチな世界だけに、その存在が知られるようになると、多くの人が訪れるようになり、現在の真清田神社前に移転することに。地元・尾州ならではのロリィタ服を作りたいという夢も持ち始めます。
尾州ロリィタ~地場産業をロリィタの力で盛り上げたい
「何件も工場をまわって、2020年に尾州ロリィタはやっと完成しました。その後、葛利毛織工業株式会社さんとご縁があって、生地を取り扱うようになりました。まわりの人たちからは“あんなすごい会社によく行ったね”と言われましたが、当時は何も知らなかったので、ロリィタ服を着てひとりで乗り込んでいって。本当に怖いもの知らずでした(笑)。」
そういえば以前、葛利毛織工業さんで取材させていただいた時に、葛谷社長が「面白い女の子がいてね…」とその時の話をしていたことを思い出しました。その時に、一着だけあったサンプルの尾州ロリィタを見せていただいたのですが、あまりの出来栄えの素晴らしさに身震いしたのを覚えています。
あの葛利毛織工業さんとロリィタ服を作ってしまう度胸と感性。OKしちゃう葛谷さんも度量が広すぎ。でも、その時とてもワクワクしたんです。やれるかやれないか、を考えるより、やってしまうショコラさんの行動力と、受け入れる尾州の懐の深さに。閉塞した世の中を一気に変えちゃうのは、こういう人だと思ったのでした。
尾州ファッションショー~繊維産地・尾州だから、もっと尾州の服を楽しもうよ
2021年、ショコラさんは生地ではなく「尾州のファッション」を広める機会を増やそうと考えるようになりました。
「尾州は生地では最高級だけど、ファッションとなるとコレというものがないと思ったんです。ロリィタは一般的ではないけど、だからこそ目立つ。尾州発のロリィタで、認知のきっかけづくりができればと思いました。」
そこで、ロリィタたちによるお茶会(イベント)を開催。翌年には、他の企業も巻き込んで、尾州ファッションショーを立ち上げました。なんというか…この行動力、すごすぎますよね。
そして2024年2月11日。3年目となるこの日、本町商店街にあるオリナス一宮にて開催された、小さなファッションショーに参加することができました。
「尾州Valentineコレクション~家族みんなで尾州~」と題されたこのショーには、トップバッターに第一線で活躍するロリィタモデル深澤翠さんが登場。チョコレート色のクラシカルなドレスに包まれ、エレガントでかわいらしいですね♪
続いてランウェイを歩いたのは、Tシャツやカジュアルなロリィタ服、浴衣など尾州生地でできた服を身にまとった夫婦、母娘など一般の方たち。テーマの「家族みんなで尾州」のとおり、誰もが素敵に気持ちよく着られる尾州服の魅力を伝えていました。
最後に登場したのは尾州生地でできたウェディングドレスとタキシード。ため息がでるほどの美しさです。
ファッションショーは毎年Valentineに開催される予定です。まだ始まったばかりのイベントですが、回を重ねながら、大きなうねりになっていくことを期待しています。
【レポート】「LOCOCO」で秘密のロリィタ体験!
郷に入っては郷に従え、と言います。ロリィタの気持ちはロリィタになってこそ知ることができる、、、ということで「LOCOCO」でロリィタ体験をすることに。
なんでも現在は海外で盛り上がっているそうで、ファッションショーに登場した深澤翠さんはパリコレに参加していますし、中国でもブームが過熱。「LOCOCO」にも外国人のお客さんが多く来店しているそうです。これは、やってみないと!
真清田神社の御前にあるビルの2階。中に入るとそこはもうピンクに染まったロリィタの世界が広がっているではありませんか!いきなり甘い、甘すぎる。フリフリ衣装や小物がたくさんの、“プライベートな秘密の小部屋”感が漂っています。
主なプランは4種類。
おためしLolitaコース(2名~)¥5,500
ちょこっとLolitaコース(1名~)¥8,800
LOCOCOコース(1名~)¥13,200
ゴシックロリィタコース(1名~)¥16,500
こちらをベースに、「お散歩コース」などお好きなオプションを付けることができます。一番人気は「LOCOCOコース」ということで、そちらを体験することにしました!
①服選び
コースのランクがあがると、当然選べるドレスのランクもあがります(選べる服の枚数も)。このコースでは1着10万円近くするものが用意されています。最近では、下妻系の「古典ロリィタ」ブームだそうで、定番ブランドが人気。服を選ぶ時、鏡を見ながら自分の顔に似合うかどうか比べたりするものですが、ロリィタの方々は鏡に合わせることなく「これが好き!」で決めるのだとか。驚きましたが、いいですね。誰かの評価など関係なく、ただ好きという欲求がロリィタの原点なんだなと改めて感じました。
①メイク
最も時間をかけるのがメイク。「LOCOCOコース」の場合は、1人1時間以上かけて丁寧に仕上げていきます。「実はロリィタってメイクやポーズなどにも独自の枠組みやルールみたいなものがあって、私も10代の頃、そういった情報を知りたかった、というのがあったので、ここで化粧品や道具を試してもらえたらいいなと思って」とショコラさん。ブランド化粧品を使い、ロリィタになるための道具の使い方も教えてもらいました。
ちなみに最近のロリィタは、ひと昔前のギャルメイクの時代と比べて、つけまつげは2枚から1枚になるなど、随分ナチュラルになってきているそう。
ウイッグ(別料金)をすると、別人級の自分が出来上がりました。
③撮影
窓辺にソファがあるので、そこで撮影タイムに入ります。ロリィタちゃんになれる定番ポーズを教えてもらい挑戦。目をつぶるのは、わざと顔に注目させず、ドレスを見せたいからなんですって。
自撮りタイムはいつもより盛れてる自分が写って新鮮です。
たくさん写真を撮ってもらい、体験終了後には撮影データもいただけて思い出に残りますね。
そして…特別に「尾州ロリィタ」も試着させていただきました。
なんといっても尾州を代表する老舗毛織物メーカー・葛利毛織工業株式会社の生地!百貨店でしか出会えない高級スーツ生地でできたロリィタ服です。
この見事な光沢、上品さ。重厚のように見えて、実はどのロリィタ服よりも軽く、肌触りも素晴らしい。しかも、汚れにくくヘタらないので、ずっと美しいまま。まさにロリィタ服の世界最高峰といえる逸品です。
「実は、ロリィタ服はフリルやギャザーが多いので、尾州ロリィタでは、スーツにして3Lサイズのダブルの量の生地を使うんですよ。しかも、縫うのがすごく難しいので職人泣かせのブランドなんです。」
今回は、本町商店街でも撮影してみました(別料金)。一宮市はコスプレイヤーがたくさん集う街なので、どんな格好をしていても誰にも驚かれない (笑)。ショコラさんとツーショット撮影してみて思いましたが、ロリィタは2人ですると、より盛れるのでおすすめですよ。
普段着として着られるロリィタ服を作りたい、というショコラさんの熱い想いで2020年に実現した「尾州ロリィタ」。マニアックな世界だからこそ、その唯一無二の魅力が一層光輝くに違いありません。
一宮といえばロリィタ!の時代が来ています!
ロリィタは70年代にはじまり、少女たちの夢をのせて現在まで進化してきたスタイルですが、偏見覚悟で申し上げれば、地方色という形で、「尾州ロリィタ」という新しいブランドが誕生するに至ったことは、ある意味、歴史的な一歩ではないか?と思うのであります。「好き」に支えられて、尾州も進化していく。少しずつではありますが、そんな好循環が生まれつつあります。
真清田神社に来たら、ロリィタ体験もしよう。もうそんな時代になっていますよ!?
オーナー ショコラさん
愛知県一宮市の商店街の一角でロリィタ体験サロン「LOCOCO」を経営。愛知県尾張地方で昔から作られている伝統的な毛織物である「尾州生地」と日本のかわいい文化である「ロリィタファッション」を組み合わせた全く新しい形の洋服『尾州ロリィタ』を広めるためのプロジェクトを立ち上げるなど、一宮市に根差した活動なども積極的に行っている。
2023年11月11日(土)に真清田神社で開催された「BISHU COLLECTION produced by TGC」ではアイドルグループの「fluits zipper」へ衣装提供も行った。
ロリィタ体験サロンLococo
住所 | 一宮市本町1-2-4 モンベールⅠ 2F |
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営業時間 | 土・日曜日のみ ※平日も営業できる日がありますのでご相談下さい。 10:00~20:00(最終受付19:00) |
店舗HP | https://lococo-lolita.jp/ |