一宮という市名に由来の由来となった、「尾張国一之宮」である真清田神社。
今まで由緒や歴史的イベントなどを紹介してきましたが、実は全国に先駆けてお茶会を開いていたという事実もありました。
真清田神社「桃丘亭」で毎月22日に実施されている月釜「桃丘会」は、昭和25年から始まっており、茶どころ一宮として茶の湯文化が根付いた一因かもしれません。
文化・文政期の尾張徳川家の時代から茶の湯文化ともに嗜まれてきた和菓子たち。
尾州産地でも広く親しまれ、「尾州の和菓子」として更なる発展を遂げようとしています。
目次
東海地方初の茶室 その名も「桃丘亭」!
始まりは2人の宗匠(そうしょう)
戦後間もない昭和22年頃、養老公園内(岐阜県)にて茶室を建設する計画が持ち上がります。
計画をたてるため、即中斎宗匠と無適斎久田宗匠をお迎えし、打ち合わせを重ねていきます。
ここで「宗匠」とは何ぞやと思う方もいるかと思いますので、ざっくり説明すると、茶道の当主に当たる方です。
表千家を例にいえば、千利休を初代とする「家元(いえもと)」が家を継ぐことになっており、その家元のことを「宗匠」とお呼びしているんだとか。
なぜ即中斎宗匠・無適斎久田宗匠の2人が同時に存在しているのか、、、
その理由は家系にあります。
家元以外にも久田家・堀内家・吉田家などにも「宗匠」と呼ばれる方がいらっしゃいます。
特に久田家は千利休の血筋を残している重要な家系で、その久田家の当主であるため無適斎“久田”宗匠と呼ばれているんです。
(写真:即中斎宗匠の染筆)
話は戻り、打ち合わせの結果、実際に公園入口に建設することが決まります。
やっとの思いで設計・建設計画が進められると思いきや、地元の協力者が少なく建設は延びに延びてしまうことに、、、
2人が残念がっていたであろう、その時!
時を同じくして真清田神社でも茶室建設の話が持ち上がり、養老公園の設計を流用することになるんです。吉田萬次(元一宮市長)・森伝吉の2名が尽力したことにより、念願の建設がスタート。無適斎久田宗匠と林不同庵が合議して決定した原案に、即中斎宗匠の意見を取り入れ、茶室・控えの間・水屋で構成された東海地方唯一(当時)の茶室完成を目指します。
斎館の一部として使用するため、改築をはさみながらも昭和25年10月に建設が終了。
翌年4月に即中斎宗匠が献茶式という儀式のため来社し、当茶室を「桃丘亭」と名付け、遂に完成を果たします。
※斎館・・・神職等が神事に携わる前に心身を清めるためにこもる建物。
なぜ、「桃丘」となったのかというと、
真清田神社のあたりは、桃の木が群生していたことから「松降荘 青桃丘(まつふりのしょう せいとうきゅう)」と呼ばれており、その地名から「桃丘」を取ったと言われています。
また桃は厄を払うと言われていることから、桃花祭の由来(参詣者は桃の枝で身を清めた後、木曽川へ放流していた)にもなっている大変縁起の良い植物とされています。
そんな「桃丘亭」では、昭和25年から毎月22日に月釜(神社仏閣が行う茶会のこと)を実施しており、月釜「桃丘会」は全国に先駆けて始まったと言われています。
2023年現在、73年の歴史を誇る月釜「桃丘会」。
茶どころ一宮として、茶の湯文化が定着している大きな要因と言えるでしょう。
更に歴史を遡ると・・・・
そもそも何故、東海地方初の茶室ができるという流れになったのか。
歴史を遡ると面白い背景が見えてきました。
頃は文化・文政期。
尾張徳川家のおひざもととして、この地域は茶事が大流行していました。
来客時や冠婚葬祭の時はもちろん、町内会や田植えの前などにも、まずは「抹茶一服」から初めていたと言われています。
過熱しすぎた結果、藩主から禁止令が発令されるほどで、とどまる所を知りません。
江戸後期には下級武士や庶民層にまで普及し、禁止令もお構いなしに「茶の湯」は日常の1つに。
来客時や冠婚葬祭で抹茶とお菓子をふるまうだけでなく、寄合とよばれる村民同士の話し合いの場、田植えの一服など、様々なシーンでお茶を嗜むようになっていったそうです。
一宮市は和菓子の宝庫
「桃丘会」での逸品たち
2022年に開催された70周年記念茶会をはじめ、「桃丘会」では様々なお菓子が振る舞われ、多くの人を魅了してきました。
川村屋賀峯総本店の「羽二重餅」もその1つ。
最上級の羽二重粉を使用し、ふわふわ、さらさら、シルクのような柔らかな餅と上品なあんこが口の中に広がる逸品です。
その他にも桃丘会では、すゞや菓匠庵や御菓子所ふくやの御菓子が人気とのこと。どちらのお店も地元では“超”のつくほどの有名店。一見ならぬ一食の価値ありです!!
東海地方初の茶室が建設されるなど、江戸時代から茶の湯文化が浸透しているこの地では、市内各所に名店が存在します。
どのお店も素材や味だけでなく、歴史や思い、店主の試行錯誤が窺える商品ばかり。
古くから愛される銘菓から新鮮な魅力を持つ御菓子まで、ありとあらゆる和菓子が揃っています。
今でも尾張・三河では茶道を習う人が多いと言われ、身近なものとして定着しています。この地域の人は、お茶を飲みながら談笑することがとりわけ好きなのかもしれません。
もしかしたら「モーニング発祥のまち」となった所以も、この茶の湯文化の伝統を継いでいるのかもしれませんね。
デジタルスタンプラリー「尾州の和菓子巡り」開催中!!
開催期間:令和6年1月31日(水)まで
参加店舗
「川村屋賀峯総本店」「野田屋菓子舗」「明や」「尾西 金蝶堂」「和菓子処あんこや」「和菓子 ふくら庵」「和菓子いちの」「餅菓匠 清香」「御菓子司 亀屋」「御菓子司 津島屋桃陰」