びしゅうは、楽しい。
「尾州のカレント」の物語。

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尾州と私たちを結ぶ、尾州好きたちのサークル「尾州のカレント」。日本一の毛織物産地・尾州の繊維企業に属する若手社員たちが、これまでよく知られていなかった「尾州を楽しく伝える」ことを目的に活動しています。イベント主催、ブランド販売、町おこし企画…尾州を愛する彼らの熱い想いは、周囲をどんどん楽しいほうへと引き込んでいく―。

熱すぎる!尾州ファンが集う「びしゅうのお仕立て会」

気になるイベントが催されました。その名も「びしゅうのお仕立て会」。

尾州のカレントが開催するこのイベントは、尾州の最高級生地から好きな生地を選び、パタンナーやデザイナーと相談しながら洋服を仕立てる2日間の特別な催し。半年前に開催された第1回は、全国各地から約100名の来場があり、百貨店の売上を軽く超えるなど、初めての試みながら、すでに大成功を収めていました。

お仕立てだけのイベントで、この数字は異例。立役者である「尾州のカレント」とは、一体どんな人たちなのか…その秘密を探るために、代表の彦坂雄大さんを訪ねました。


世界に名だたる名産地・尾州を盛り上げたい。

世界中のハイブランドの生地を取り扱う、日本最大の毛織物産地「尾州」。

尾州は、まるで産地全体がひとつの大きな工場のように、分業・協業体制が確立されているのが特徴です。糸から生地になるまでの、紡績、撚糸、染色、製織、編立、整理加工といった様々な工程、さらに縫製などの製造部門も、尾州の中で完結できる恵まれた環境にあることから、他地域ではできないこだわりを追求し、ここにしかない加工技術を確立してきました。

毛織物王国の象徴・のこぎり屋根の工場

毛織物王国の象徴・のこぎり屋根の工場

世界中のブランドのバイヤーたちが絶賛する最高品質の生地が手に入る尾州。ところが、そのことを一般の人はあまり知りません。

  • 紡績

  • 紡績

  • 撚糸

  • 製織

「生地屋さんはBtoB(企業同士の取引)が主で、生地を納めるまでが仕事なので、これまで消費者向けに洋服を作って売ることはありませんでした。でもそれでは、いつまでたっても消費者に尾州を選んでもらうことはできません」と彦坂さん。尾州に洋服があれば、消費者とつながることができると、まずは自社ブランド「blanket」を立ち上げることにしました。

blanket

自社ブランド「blanket」

しかし会社ではずっと若手であり、その後ずっと後輩ができたことはありません。志高く始めた彼の挑戦でしたが、ひとりであるが故に、多くの困難に直面しては、悩む日々を過ごすことになりました。


企業の垣根を越えたサークル「尾州のカレント」が誕生。

そんな頃、転機がやってきます。一宮市で人気の大規模イベント「杜の宮市」の運営者から彦坂さんのもとに、イベントの出店者である尾州の繊維の企業をひとまとめにして紹介できないか、という相談があったのです。

「個別で小さく出店するよりも、尾州の企業でまとめることで、その良さをダイレクトに見せられるのではないか」という提案でしたが、そこで浮上した懸念は、彦坂さんが一会社員の身で、どうやってうまく同業者と協力してイベントを進めるか、というところにありました。そのため、業務時間外にサークルとして活動するのであれば、会社も応援してくれるだろうと、「尾州のカレント」を設立。彦坂さんは「この人となら」という才能と情熱ある人たちに声を掛け、ひとりずつメンバーを集めていきました。

現在メンバーとしてwebサイトや販促物の製作を担当する大鹿株式会社の川尻さんも、そのひとりです。もとは広告の企画でしたが、同級生の彦坂さんを通じて尾州を知り、尾州の素晴らしさや、カレントの活動の面白さに惹かれ、中心メンバーとなりました。
「彦坂に誘われるまで尾州のことは知りませんでしたが、知れば知るほど尾州には、他にはない素晴らしい技術や歴史があるんだと感動しました。街の人にとって、誇るべき文化があるというのは本当に素敵なこと。最初は外部の人間として関わっていたけれど、尾州を良くしようという熱意のある人たちの集まりは、どんな仕事よりもワクワクするものでした」。

カレントは、彦坂さんのように多くの人たちを巻き込む求心力のある人や、川尻さんのようにweb制作が得意な人、イベント集客が得意な人、企画をまとめる人、服を作りたい人など、それぞれ「得意」を持った人たちが集まり、地道に尾州の魅力を発信する活動をしています。活動資金も、補助金もない彼らの通る道は、いつも楽ではないけれど、それを支えているのは、とにかく「尾州の服が好き」という思いがあるから。
彼らの持つエネルギーが集まって、ぐんぐんと加速しながら物事が進んでいく様子は、まさにカレント―“川の流れ”のようですね。


生地を選べるオーダー服を産地価格で―“びしゅうの〇〇シリーズ”

カレントでは、オリジナル商品も企画。最初に作ったのは「びしゅうのズボン」です。

「びしゅうのズボン」

「びしゅうのズボン」

「はじめにズボンを選んだのは、シャツに比べ、ズボンは一度気に入ると何着も購入されるアイテムだから。一度着てもらえれば、その心地よさが分かってもらえるという自信があります。買うかどうかはその先の判断であって、まず僕たちは“すごくいいね” “こんな気持ちいい手触りなんだ”とまずその感覚を体感してもらうことを大切にしています」と川尻さん。

これを2019年11月に木玉毛織で開催した「びしゅう産地の文化祭」で販売したところ、反響が大きく、ズボンやスカートなどの「びしゅうの〇〇」はなんと累計1000着を突破する人気シリーズとなりました。

「びしゅうのスカート」

「びしゅうのスカート」


作りたいのは「産地に行って、服を買う」ムーブメント。

「びしゅうのお仕立て会」に話を戻しましょう。彦坂さんは、このイベントを企画した時、音楽ライブや屋台に頼らない、お仕立てだけのイベントで、一体どれだけの人が来てくれるか不安だったと打ち明けます。「成功させるには、産地だから出せる最高の生地を揃えたい」と葛利毛織株式会社の葛谷社長に直談判し、産直販売が実現しました。「これは本当にすごいこと。成功すると確信しました」と彦坂さんは笑顔を見せます。

この成功から次は何を目指すのかを聞いたところ、「僕が生きているわずかな間にできることは、せいぜい消費者と産地をつなぐことまで。次の世代が、続いていけるように、そのラインを繋げることを全力でやりきるだけです」と意外な言葉が返ってきました。
カレントは、結果を急がず、目の前のひとりに届くように、尾州の魅力を伝えます。一過性のブームを追うのではなく、揺るぎない関係性をつくるために『産地に行って、服を買う。』を、実現し続けているのです。その熱がひとりずつ伝わり、やがて線や面になる頃、尾州はゆっくりと生まれ変わることでしょう。楽しむ人が増えて、新しい文化となって、もっと、楽しくなるはず。

「尾州は、たのしい」。-尾州のカレントが、そのことを教えてくれました。


◆NEWS◆

1.「新見本工場」リニューアル

大鹿株式会社が自社ブランドやカレントの商品を販売する実店舗「新見本工場」は、2023年11月、2倍の広さでリニューアルします。ここの目玉は「お仕立てサロン」と、そして「ウールを自分で洗える選択スペース」。手入れの方法を聞かれることが多いため、実際に手洗いできるスペースを設けたそうです。

2.「BISHU COLLECTION produced by TGC」衣装提供

一宮市が11月11日(土)・12日(日)に開催する「BISHU FES.」の目玉イベントとなる「BISHU COLLECTION produced by TGC」に新見本工場が衣装提供を行うことが決定。様々な服を着ているモデルさんたちは、尾州の着心地を、どう感じるのでしょうか。楽しみですね。

※BISHU COLLECTION produced by TGC」とは・・・
史上最大級のファッションフェスタ「東京ガールズコレクション(TGC)」が展開する「地方創生プロジェクト」
屋外でのイベント実施は初の試みとなり、今までにないファッションショーとなることが予想される。

新見本工場

住所 一宮市西萩原上沼40
営業時間 月曜 13:00~17:00
水曜 13:00~17:00
土曜 10:00~17:00

※月水土が祝日の場合は10:00~17:00
※月水土以外は定休日

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